エンジニアを志すと、必ず聞いたことがあるのが「35歳定年説」です。大抵 35歳以上のエンジニアに「デマ」と認定されることが多いのですが、実際の所はどうなのでしょう。
主催している Slackコミュニティでご質問をいただいたので、20歳のときに新卒エンジニアとして就職した後、現在41歳の筆者が紹介したいと思います。
35歳定年説とは?
35歳定年説とは、「エンジニアは35歳を過ぎたら現役を続けられない」といった俗説で、いつ頃から言われているのかは分かりません。1997年頃にはすでに「有名な説」として否定的な記事が登場していました。
なぜ 35歳なのか、IT業界だけのものなのかも分かりませんでした。
実際に 35歳を迎えるとどうだったのか
筆者の場合は「たまたま」、35歳定年説はちょっと納得のいく説になってしまいました。というのは、丁度 35歳頃の時、方針転換を図っていたためです。
筆者の場合、現在「H2O space」という制作会社の代表(17年目)と「ともすた」という学習支援会社の代表(1年目)をしています。しかし、実はこの「ともすた」という会社の構想を考えたのは、7年前だったのです。丁度 35歳前後の時でした。
ともすた設立の経緯
筆者が、ともすたという事業の構想を考えたのは、H2O spaceが 10周年を迎えたときです。それまで H2O spaceは、夫婦で制作の仕事をしていたのですが、仕事はありがたい事に非常に順調で、無事に 10年目を迎えることができていました。しかし、仕事が忙しすぎて子供もおらず、35歳を向かえるに当たってこの先会社と家族をどうしていこうかを考えていく必要がありました。
筆者はプログラマーで、妻がデザイナーとして、お客様のウェブサイト制作をお手伝いしていたのですが、妻は仕事を抑える事としてクライアント様には事情を話して案件を抑えさせていただいたり、パートナーのデザイナーに引き継いだりしました。
また、自分の場合はそれまで、エンジニアの仕事と講師などの教育の仕事を、両立してやっていたのを、より効率の良い働き方を考えて教育の方に力を入れようと考えました。そこで生まれた事業が「ともすた」です。ただ実は、結局この「ともすた」という計画が形になるのは、それから5年かかるわけですが。
ちなみに、こうして生活を整えた結果、無事に家族が増えて、今は子育てと仕事を両立しようと奮闘しています。
結局 35歳で引退したのか
さて、それで結局 35歳で「定年」を向かえたのですが、結果からいうと向かえていません。今も、現役で開発作業を行っています。そのため、定年説が正しいかどうかは「正しくない」というのが結論でした。
先ほどの話と矛盾しますが、それでは結局 35歳定年説とはなんなのでしょう。
35歳は人生の転換期
結局、40歳を過ぎて今思うのが、35歳という年齢は仕事人生における転換期で、この先どうしていくかを考える年齢になる人が多いのではないかなと思います。
- (独身の場合は)結婚をするかしないか
- (既婚の場合は)子供を持つか持たないか
- 家を買うか買わないか
- 転職をするかしないか
など、人生において重要な選択が 40歳が近づくにつれて選択肢が少なくなってしまいます。30歳そこそこの時は、まだ余裕と構えて仕事にかまけていた人も、30代の半分を向かえて「残りの5年で、次の 40代を向かえる準備をどうするか」を考える年齢なのかなと思います。
ただ、そこで「エンジニアを続ける」という選択をすることは可能です。その場合は、35歳定年説は当てはまらなくなります。現在のほとんどのブログ記事などが、「35歳定年説は嘘」と言われているのは、こうして35歳頃の時に「エンジニアを続ける」と判断した方が、記事を書いているからではないかなと思います。
ということで、35歳定年説は「気にしなくても良い」訳ですが、ただしいくつか注意点はあります。
若さは武器

35歳以上のエンジニアが、能力的に衰えるのかとか、向上心が衰えるのかなどは正直よく分かりません。ただ、「若いのは有利」というのはあると思います。
筆者はよく Twitterなどでも「フリーランスになるなら若いうちに」「若いうちならなにやってもOK」などと発言します。
筆者は 24歳で独立して起業したのですが、若いうちに独立したのは本当によかったなと思っています。もし、30歳を過ぎてから独立したいと思っても、おそらく筆者はできなかったと思います。若さが武器な理由は次の通りです。
- 失敗してもやり直しが簡単
- 「若い」というだけで、仕事がもらえたり、可愛がってもらえる
- 多少の失敗も許してもらえる
- 徹夜にも強いし、時間を作りやすい
などなど、若さが羨ましいです。
若いうちは、多少スキルが低くても可愛がってくれるクライアントさんがいると、仕事を回してくれたりします。しかし、それが通用するのはさすがに、若いエンジニア限定でしょう。
また、学習するとしても独身な場合も多いでしょうし、時間も作りやすく、多少の徹夜などもこなせます。記憶力の違いとか、理解力とかはもしかしたら 35歳を過ぎてもそれほど変わらないのかも知れませんが、実際に勉強に充てられる時間というのは、やはり 20代の方が圧倒的に多い印象です。
ということで、結論を言うと「35歳定年説」というのは、「35歳以上がダメ」という話ではなく、「35歳未満は有利」というポジティブな意味なのではないかなと思いました。若いうちに、起業やフリーランスなどにチャレンジし、そのままうまく行けば 35歳以降も続けたら良いでしょうし、もし自分に合わなそうなら、35歳くらいまでに自分に合った職に就く。これが「35歳定年」に当てはまりますが、単に違う業界・違う職に就いただけで、「定年」というほどネガティブなイメージではありません。
30歳を過ぎてエンジニアを目指したいという方は、20代の人に比べれば時間が十分とは言えないので、多少焦る必要はあるでしょうが、例えばそれでエンジニアになれたからと言って、35歳で定年を迎えるという意味ではありませんので、ご安心してチャレンジしてみていただければと思います。